283系

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紀勢線紀伊内原-御坊

登場の背景と概要
紀勢線で運転されている特急「くろしお」の競争力強化のため、曲線通過速度の向上、特急「スーパーくろしお」の設定により、所要時間の短縮を図っていました。しかし、高速道路の延伸により一層の競争力強化を図るため、所要時間短縮と居住性の向上を図るため、JR西日本は1996年に283系振り子式直流特急形電車を開発しました。283系は6両編成と3両編成があり、3両編成は両先頭車が貫通型と新宮寄りの先頭車のみ貫通型とした2種類が製造され、6両編成が2本、3両編成はそれぞれ1本が製造されました。

車体
車体は振子角5度を考慮して従来の特急車両より一回り小さい断面としたため、車体幅を2850mm、床面高さを1120mmと281系より40mm低くした鋼製車体で、腐食防止のため屋根及び床板についてはSUS板を使用しています。非貫通先頭車は大型曲面ガラスを採用した流線型です。一方、貫通型先頭車はほろ収納式とし、幌蓋装置で前面をカバーしています。車体側面には連続窓風の大型固定窓と700mm幅の片開き扉がモハ283形0番台は2ヶ所、それ以外の車両は1ヶ所設置されており、戸閉装置は直動式のWTK115Aで、鴨居部に取り付けられています。車体側面には種別幕及びLED行先表示装置が設置されています。低重心化のため2台の室内機を屋根上、1台の室外機を床下に設置する36000kcal/hのWAU305としました。通風器は取り付けられておらず、ユニットクーラのファンにより新鮮気を取り入れるようになっています。外部塗装は車体上部が南紀地方の海の色をイメージしたオーシャングリーン、窓より下を白色としました。また、分割併合を容易にするため、貫通型先頭部には自動解結装置が取り付けられました。

台車
台車は振り子機能を備えた軽量ボルスタレス方式のWDT57/WTR241で、牽引力は1本リンクを介して伝達されます。枕バネは空気バネ、軸箱支持方式はコイルばね円筒積層ゴム併用方式とし、高速走行時の安定性確保のためヨーダンパ及びアンチローリング装置が取り付けられています。動台車の動力伝達方式はWN継手式中実軸平行カルダン方式としています。振り子動作をスムースにするため、転がり抵抗の小さいベアリングガイドを採用しており、振り子梁を受けるため、側梁中央部が沈んだ構造としています。283系は制御付き自然振り子式を採用することで、曲線区間において本則+35 km/hでの走行が可能です。基礎ブレーキ装置は車輪踏面への熱影響を防止するため動台車が自動隙間調整装置を内蔵したユニット式の車輪踏面片押し式、付随台車は踏面ブレーキを併用した1軸2枚のディスクブレーキとしています。

走行機器及び補機
主制御装置はIGBTを採用し出力220kWの三相誘導電動機WMT104を軸単位で個別制御する3ステップVVVFインバータ制御部と出力130kVAの補助電源ユニットを一体化したWPC8で、補助電源ユニット故障時は主電動機を1群開放し、VVVFインバータをCVCF運転することで補助電源機能をバックアップできます。電動空気圧縮機はレシプロ方式のWMH3093-WTC2000Dでサハ283形及びクハ282形の床下に設置されています。集電装置は低重心化のためシングルアームパンタグラフWPS28が電動車の屋根上に1基取り付けられ、耐雪構造を有しています。空気ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、抑速ブレーキとT車遅れ込め制御を取り入れています。

客室設備
座席は全てリクライニングシートを採用し、シートピッチはグリーン車が1160mmで1-2列配置、普通車が970mmで2-2列配置となっています。グリーン車は客室からの前面展望を可能とするため、運転台と客室との間の仕切り壁を低くしています。また、客室中央に禁煙席と喫煙席を区分するための仕切りが設置されていましたが、1998年に撤去されました。モハ283形300番台には展望ラウンジが設置され、海側には1人掛け座席が4箇所、海側には4人掛けソファが設置されています。客室とデッキを仕切る扉の上部にLED式車内案内表示器が設置されました。全ての付随車に、洋式トイレ、男性用小便所、及び化粧室が設置されており、いずれも循環式汚物処理装置が取り付けられています。なお、サハ283形200番台、及びクハ282形700番台に車椅子対応大型トイレとなっており、多目的室も設置されています。

運用
1996年7月から京都と新宮を結ぶ特急「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」として営業運転を開始しました。現在、新大阪と白浜・新宮を結ぶ特急「くろしお」に使用されています。

主要諸元
項目	内容
電気方式	直流1500V
車両性能	最高速度: 130km/h
全長	20300mm
全幅	2850mm
全高	3830mm
台車	WDT57(動台車)　WTR241(付随台車)
集電装置	WPS28
主電動機	WMT104 (220kW)
駆動装置	WN平行カルダン歯車形たわみ軸継手方式(歯数比: 5.57)
制御方式	3ステップVVVFインバータ個別制御(WPC8)
冷房装置	WAU305A (36000kcal/h×1)
設計	JR西日本