登場の背景と概要
播但線を経由して大阪と兵庫県但馬地域を結ぶ特急「はまかぜ」に使用されていたキハ181系の老朽化が進んだことから、JR西日本はキハ189系特急形気動車を2010年に開発しました。キハ189系は中間車キハ188形と先頭車キハ189形0番台/1000番台の3両編成で7編成が製造されました。
車体
キハ189系は幅2950mmの軽量ステンレス車体を採用し、車体側面の溶接にレーザ溶接を導入したことにより強度向上と外板のひずみを抑制しています。また、台枠横梁、側柱、屋根垂木の位置を一致させたリング構造とすることで、側面強度を向上させました。外板は無塗装で窓周りに茜色の帯、側面窓下に白色の帯が配されました。先頭部は高耐候性圧延鋼材（SPA）で中央部に貫通扉が設置され、後退角を設けることでオフセット衝突時に衝突したお互いの車両が逃げる方向に誘導できるようにしました。前面窓上にはシールドビームを採用した2つの前照灯が、前面窓下に横長のLEDを採用した尾灯が左右それぞれに設置されています。運転席は高運転台を採用し前方視認性を向上させました。床面高さを1170mmとし出入口のステップを廃止しています。また、先頭部を除く車両間に転落防止幌が取り付けられました。車体側面には座席2列毎の大型固定窓と幅1000mmの自動片開き扉が1カ所設置され、押しボタンによる手動開閉が可能です。車体側面にはLED行先表示装置が設置されています。また屋根上には20000kcal/hのユニットクーラWAU707Aが2台取り付けられています。連結器は密着連結器で、分割併合を容易にするため、先頭部には自動解結装置が取り付けられました。
台車
台車は軽量ボルスタレス方式で1軸駆動方式のWDT66で、牽引力は1本リンク式牽引装置で伝達されます。床面高さを低くするため、台車側梁を弓形にすることで枕バネ位置を低下されています。枕バネは空気バネ、軸箱支持方式は軸梁式とし、ヨーダンパ及びアンチローリング装置を取り付けています。基礎ブレーキ装置は車輪踏面への熱影響を防止するため動軸側が自動隙間調整装置を内蔵したユニット式の車輪踏面片押し式、従軸は踏面ブレーキを併用した1軸2枚のディスクブレーキとしています。
走行機器及び補機
機関はエンジンの排気ガスを浄化するためコモンレール燃料噴射システムを採用したインタークーラと排気タービン過給機付き水平直列6気筒で出力450PSのSA6D140HE-1が2基取り付けられています。変速機は湿式多板クラッチを採用した1段3要素で直結4段のDW21Bです。機関冷却装置は小型化し床下に取り付けられています。キハ189系はシステム構成を電車に合わせることでメンテナンスの低減を図ることを目的に、各機器の電気化、部品の共通化やベルトレス化を推進したため、走行用エンジンの1つに定速回転装置を介して接続された機関駆動式発電機WDM113より三相440Vを出力し、冷房装置や暖房装置に供給したり、単相100Vに降圧したり、直流100Vに整流することで制御回路や補助回路に供給されます。また、ベルト駆動式の空気圧縮機C600が2台取り付けられています。キハ189系は引き通し配線量と制御リレーを減らすため、PLCを使用した伝送制御装置TICSを導入しています。空気ブレーキ装置は排気ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、排気ブレーキにより所定の制動力が維持できなくなった場合は、空気ブレーキを補足します。
客室設備
座席は全てリクライニングシートを採用し、シートピッチは970mmで2-2列配置となっています。客室とデッキを仕切る扉の上部にLED式車内案内表示器が設置されました。キハ189形0番台には折りたたみ式おむつ交換台、折り畳み式ベビーチェアが設置されている車椅子対応トイレ、男性用小便所、及び化粧室が、キハ188形には洋式トイレと男性用小便所が設置されており、いずれも真空式汚物処理装置が取り付けられています。なお、キハ189形0番台には多目的室も設置されています。
運用
キハ189系は2010年11月に営業運転を開始し、現在、大阪と但馬地区を結ぶ特急「はまかぜ」に使用されています。 |
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