登場の背景と概要
国鉄常磐線と帝都高速度交通営団千代田線の相互直通運転に充当されていた抵抗制御の103系1000番台通勤形電車は、加速時及び発電ブレーキ時の主抵抗器の排熱が地下鉄トンネル内の温度上昇をもたらしていました。また、電機子チョッパ制御や回生ブレーキを採用した営団6000系と比べて電機消費量が大きく、電力消費量の差額を営団に支払っていました。
そうした中、常磐線が1982年に取手まで複々線化され、相互直通運転が取手まで延長されたことで1編成の増備が必要となりました。そこで、国鉄は1982年に201系を基本に千代田線乗り入れのための変更を加えた203系の量産先行車を開発しました。203系は6M4Tの10両編成で、8M2Tの103系1000番台と比べて電動車の数が減少しています。
車体
車体は幅2800mmの狭幅車体をもち、車体軽量化のためアルミ合金製押出形材で構成し、201系の車体と比べて1両あたり5t軽量化されました。外板は無塗装で前面及び側面の窓下にはエメラルドグリーンの帯が配されました。車体側面には幅1300mmの自動両開き扉が4カ所設置され、扉間には上段下降、下段上昇の2連式ユニット窓が設置されました。軽量化のため、戸袋窓は廃止されています。戸閉め装置はTK4Jで、腰掛の下に設置されました。車体側面には電動行先方向幕が取り付けられました。前頭部は地下鉄乗り入れに対応するため非常用の貫通扉が設置されました。屋根上には押込形通風器と42000kcal/hのユニットクーラAU75Gが設置されています。
台車
台車は空気バネを採用したDT46A/TR234で、軸箱支持方式は円筒案内式としています。軽量化のため201系のDT46/TR231とは台車枠の板厚が3mm薄くなっています。なお、ブレーキ装置は電動台車が踏面片押式、付随台車は軽量化のため踏面両抱き式です。
走行機器及び補機
主電動機はチョッパ制御用に開発された出力150kWのMT60直流直巻電動機で、定格速度を高くしています。モハ203形には高容量の逆導通サイリスタを採用し数を半減しコストダウンを実現したCH1A形チョッパ制御装置とCS53A主制御器により、モハ202を含めた8個の主電動機を制御しています。歯数比は千代田線の運転条件を考慮して6.07に変更されました。また、千代田線でのブレーキ初速を考慮して、回生ブレーキは全界磁式に変更されました。これに伴い高速領域で回生ブレーキが使用できなくなるため、ブレーキ補助抵抗器を大きくしました。空気ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキとしています。モハ203形にはPS21形パンタグラフを1台取り付けています。190kVAのDM106ブラシレス電動発電機はモハ202形に取り付けられました。
客室設備
客室設備はロングシートで、座席端には袖仕切が設置されています。客室天井は冷房用ダクトを天井内に埋め込まれ、また冷風吹出口がスリット状になりました。
量産先行車の運用
203系量産先行車は1982年11月より常磐緩行線及び営団地下鉄千代田線での営業運転が開始されました。
量産車
1984年からは203系0番台量産車7編成の投入が開始されました。量産先行車と異なり、高速域での回生率向上のため、回生ブレーキは全界磁・弱め界磁切替方式となりました。
運用状況及び廃車
203系0番台は東京地下鉄千代田線との相互乗り入れに使用されていましたが、2009年よりE233系2000番台への置き換えが開始され、203系0番台は2011年に全車廃車となりました。 |
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