登場の背景と概要
鳥取県による山陰線鳥取-米子間の高速化事業実施に伴い、JR西日本はキハ126形気動車を2003年に増備しました。その際、いくつかの改良を施したキハ126系10番台を開発し、5本の2両編成が後藤総合車両所に配備しました。
車体
キハ126形は幅2800mmのビードレス狭幅軽量ステンレス車体で、防音、防振を強化するため床構造がステンレスプレートと床敷物からなる総厚6.5mmから、キーストンプレート、床詰め物と床敷物からなる総厚26mmに変更されました。このため床面高さがキハ126形0番台より18mm高くなったため出入口にスロープが設けられました。外板は無塗装で側面の窓下には青色と赤色の帯が配されました。先頭部には貫通扉が設置され、貫通扉上にはLED式行先表示装置が、その左右に角形のシールドビーム前照灯とLED式尾灯が取り付けられています。前頭部は黒色に塗装され、貫通扉には赤色のストライプが、前面窓下には赤色の三角形のアクセントが配されています。また、先頭部を除く車両間に転落防止幌が取り付けられました。車体側面車端寄りには幅1000mmのステップ付片開扉が設置され、押しボタンによる手動開閉が可能です。側面構体は変更され、扉間には1100mm幅と500mm幅の固定窓が、前端部に幅330mmの下降窓と乗務員用の開戸が、後端部に幅1000mmの固定窓がそれぞれ設置されました。窓ガラスには合わせガラスが用いられています。車体側面にはLED行先表示装置が設置されています。また屋根上には冷房能力向上のため冷媒にR407Cを採用した20000kcal/hのユニットクーラWAU707Aが2台取り付けられています。連結器は密着連結器が使用されています。
台車
台車はボルスタレス空気バネ方式の動台車がWDT60A、付随台車がWTR244Aで、牽引力は1本リンク式牽引装置を介して伝達されます。枕バネは空気バネ、軸箱支持方式は円錐積層ゴムとされています。セラミック噴射装置や踏面清掃装置の取付準備工事が実施されています。動台車は2軸駆動です。基礎ブレーキ装置は車輪踏面片押し式、付随台車は踏面ブレーキを併用した1軸2枚のディスクブレーキとしています。
走行機器及び補機
機関はインタークーラと排気タービン過給機付き水平直列6気筒で出力450PSのSA6D140-H-1が1基取り付けられています。変速機は湿式多板クラッチを採用した1段3要素で直結4段のDW21です。機関冷却装置は小型化し床下に取り付けられています。キハ126はシステム構成を電車に合わせることでメンテナンスの低減を図ることを目的に、各機器の電気化、部品の共通化やベルトレス化を推進したため、走行用エンジンの1つに定速回転装置を介して接続された機関駆動式発電機WDM111より三相440Vを出力し、冷房装置や暖房装置に供給したり、単相100Vに降圧したり、直流100Vに整流することで制御回路や補助回路に供給されます。空気圧縮機は液体変速機に接続されたベルトレスのギヤ駆動式のWCW800です。キハ126は引き通し配線量と制御リレーを減らすため、PLCを使用した伝送制御装置TICSを導入しています。空気ブレーキ装置は排気ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、排気ブレーキにより所定の制動力が維持できなくなった場合は、空気ブレーキを補足します。床下にはATS-SWが設置されています。
客室設備
客室設備は、扉間にシートピッチ1600mmの形状が変更されたクロスシート、ドア付近にロングシートを設置したセミクロスシートです。座席の肘掛けや窓のフレームには木質系の材料が使用されています。また、荷棚や吊革等の部品をあらかじめ組み込んだものを構体に取り付けるパネル工法を採用しています。吊革は車体全長にわたって取り付けられています。各出入台上部にはドアチャイムが取り付けられています。キハ126形10番台の運転席後方には車椅子対応洋式トイレが設置されています。ワンマン運転時に使用する整理券発行機が連結面側の出入口脇に、運賃表示器と運賃箱が運転席後部にそれぞれ設置されています。運転台は電車と同様の横軸2ハンドル式としています。
運用
キハ126形10番台は2003年に山陰線の豊岡-益田間、伯備線の生山-伯耆大山、因美線の鳥取-智頭、及び境線の普通列車や快速「とっとりライナー」や「アクアライナー」で営業運転を開始しました。
快速「アクアライナー」は2022年3月に廃止となり、キハ126形10番台はキハ126形0番台とともに現在、山陰線の豊岡-益田間、伯備線の伯耆大山-生山間、因美線の鳥取-智頭間、及び境線の米子-境港間の普通列車に使用されています。 |
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