登場の背景と概要
国鉄の分割民営化に先立ち、1987年に経営基盤の弱い四国地区向けに新製コストとランニングコストを大幅に低減したキハ32形が開発されました。キハ32形は両運転台車で21両が製造されました。
車体
車体長15,800mm、幅2,700mmで、台車中心間距離を10,800mmとした両運転台の普通鋼製狭幅車体です。先頭車前頭部中央部に貫通扉を設置されています。ワンマン運転を考慮して運転室の床面高さを客室と同一にしました。貫通扉の左右に平面ガラスを採用した前面窓が取り付けられています。貫通扉上に行先方向幕、前面窓の下方にはシールドビームの前照灯とその外側に尾灯が取り付けられています。運転席側前面窓上に行先表示幕が取り付けられています。乗務員室用の開き戸は省略されており、運転席横に後方確認用の下降窓が設置されています。
運転席の直後には幅900mmのステップ付き折り戸が車体側面に2箇所取り付けられており、戸閉装置はバス用のものが採用されています。扉間には1,200mm幅の上段固定・下段上昇ユニット窓が6箇所と、900mm幅上段固定・下段上昇ユニット窓が6箇所、及び360mm幅の後部確認用内開き窓が設置されています。
床下には20,600kcal/hの走行機関直結式冷房装置AU26Aが1台取り付けられ、屋根上には1台の冷房室内機と2基のバス用電動換気扇が取り付けられています。走行機関の排気管は前側扉の車体中央寄りに取り付けられています。
連結器は密着式自動連結器で、ゴム緩衝器RD13が使用されています。車体は薄クリーム色に塗装され、車体側面に斜め帯、前面窓下に横帯を配しており、帯色は愛媛地区用をオレンジ、徳島地区用を藍色、高知地区用をえんじ色としています。
台車
台車は廃車発生品を改造した動台車がDT22G、付随台車がTR51Eで、枕バネにコイルバネを採用し、軸箱支持方式はウイングバネ式ペデスタル方式です。動台車の歯数比は2.976としました。基礎ブレーキ装置は片押式踏面ブレーキで、ブレーキシリンダを車体中央寄りに設置するため、台車枠と基礎ブレーキ装置に改造が加えられています。
走行機器及び補機
機関は排気タービン過給機付直接噴射式横型6気筒で出力250PSのDMF13HSで、車体に対して防振ゴムを介して取り付けられています。機関は噴射時期制御装置を採用することで燃費を改善しました。液体変速機は廃車発生品のTC2AまたはDF115Aを流用し、機関出力向上にあわせてトルクコンバータとクラッチが改良されています。なお、TC2Aは機関のタイミングギヤケースと干渉するため、変直切替サーボピストンの位置を変更しました。また、床下には機関により駆動されるC600空気圧縮機が1台取り付けられています。ブレーキはDA1A空気ブレーキ装置です。
客室設備
客室設備は一人当たりの座席幅が450mmのロングシート配列で、シートのモケットはグリーンとイエローが採用されています。カーテンは横引き式を採用しています。吊革は車体全長にわたって取り付けられています。室内照明は40Wの蛍光灯を中央に1列で配置しています。暖房はエンジンの排熱を利用した温水式で座席下に設置されています。客室天井は冷房用ダクトが天井肩部に2列に設置されています。乗務員室はワンマン運転を考慮して半室構造としています。トイレは設置されていません。
改造
車体塗装変更
薄クリーム色の車体塗装にJR四国のコーポレートカラーであるライトブルーの帯を幕板と腰部に配した塗装への変更が1988年に実施されました。
ワンマン化改造
1988年のワンマン運転開始に伴い、ワンマン運転時に使用する整理券発行機と運賃表示器を運転席後部に、運賃箱を運転席横にそれぞれ設置する改造が1987年に実施されました。
海洋堂ホビートレイン
2011年7月の海洋堂ホビー館四万十の開館にあわせて、2011年に予土線で使用されていたキハ32 4が改造されました。車体はラッピングが施されています。車内は後位側のシートが撤去され、フィギュアを陳列する棚が設置されました。
鉄道ホビートレイン
予土線全線開業40周年、及び宇和島鉄道宇和島-近永間の開通100周年にあたる2014年に、新幹線をイメージしたカラーラッピングをキハ32 3に施しました。前寄り先頭部には0系をイメージしたノーズが取り付けられました。車内は前位のロングシートが撤去され、0系廃車発生品のW12転換クロスシートを2列配置しました。また、後位のロングシートが撤去され、鉄道模型のショーケースが設置されました。
運用
キハ32形は1987年に営業運転を開始し、予讃線多度津-観音寺以外のJR四国全線で運用されました。しかし、徳島地区で使用されていた車両は1000形に置き換えられ、松山地区と高知地区に転属しました。更に、2024年に高知地区での運用がなくなり、一部が廃車、残りが松山地区に転属しました。
キハ32形は現在、予讃線松山-宇和島間、内子線、予土線のローカル輸送に使用されています。 |
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