登場の背景と概要
青函トンネルは1988年に開業以来、特急「はつかり」や快速「海峡」が運転されていましたが、東北新幹線の八戸延伸に合わせて津軽海峡線の輸送体系を見直し、快速「海峡」で使用されていた老朽化の進んだED79形機関車と51系客車を置換えるため、八戸と函館間に新たに設定される特急「スーパー白鳥」に使用するため、JR北海道は789系0番台交流特急形電車を2003年に開発しました。789系0番台はクロハ789形100番台とモハ788形100番台で構成される2両ユニットと、モハ789形200番台、モハ788形200番台、そしてクハ789形200番台からなる3両ユニットがあり、基本編成は2両ユニットと3両ユニットを組み合わせた5両編成をとし、3両ユニットを追加することで8両編成にすることもできます。
車体
789系0番台はキハ261系と同じ車体断面をもつ幅2812mmの軽量ステンレス車体を採用し、青函トンネル内の騒音を低減するため、板厚が2mmとされています。車体傾斜機能はないものの、車体断面は3度傾斜を考慮しています。先頭部を除く車両間に転落防止幌が取り付けられました。先頭部はキハ261系0番台と同様の先頭部に貫通扉を設けた高運転台とし、客室仕切りまでは踏切事故対策として板厚3.2mmの普通鋼製で、JR北海道のコーポレートカラーである萌黄色に塗装され、側面に"HEAT789 Hokkaido Express Advanced Train"ロゴマークが貼り付けられています。貫通扉には字幕式の愛称名表示装置が取り付けられています。先頭部貫通扉の左右下部にHID灯とハロゲンランプが縦に並べられ、運転台上に2つのハロゲンランプが、尾灯は前面窓左右に設置されています。車体側面にはグリーン席部は座席ごと、それ以外の車両は座席2列毎の複層ガラスを採用した固定窓と700mm幅のステップ付き片開き扉が先頭車は2箇所、中間車は1箇所取り付けられています。客室側窓には冬期のガラス破損防止のためポリカーボネイト板と一体になったガラス板を採用しています。耐寒耐雪対策として扉の凍結による開閉不良と気密不良を防ぐため押さえシリンダ機構を設けています。また、モハ789形200番台には電話室兼簡易運転台用の開き扉が、モハ788形100番台には簡易運転台機能を持つ車掌室用の開き扉がそれぞれ設けられています。また、LED行先表示装置が車体側面に取り付けられています。屋根上には19,000kcal/hのN-AU789空調装置が2台取り付けられています。通風器は取り付けられておらず、ユニットクーラのファンにより新鮮気を取り入れるようになっています。床下機器は凸凹を無くし、機器間には板厚1mmのステンレスのふさぎ板を取り付けて、雪の付着と機器損傷を防止しています。また、高速走行時の雪の舞上げを抑制するため、床下機器の最下面高さを234mmと従来と比べて49mm高くしています。
台車
台車は軽量ボルスタレス方式のN-DT789/N-TR789で、牽引力は1本リンク式牽引装置で伝達されます。枕バネは空気バネ、軸箱支持方式は軸梁式とし、140km/h運転時の安定性確保のためヨーダンパを取り付けています。低重心化のため車輪径は810mmとしています。動台車の動力伝達方式はCFRP製のたわみ板を用いたたわみ軸継手(TD継手)方式とし、歯車比は3.96としました。基礎ブレーキ装置は車輪踏面両抱式で、付随台車は1軸1枚のディスクブレーキを併用しています。
走行機器及び補機
モハ788形100番台及びモハ788形200番台に取り付けられた主変換装置は3レベルIPMコンバータと2レベルIPMインバータで構成されるN-CI789-1及びN-CI789-2で、出力230kWの誘導電動機N-MT731を4台、台車単位で制御しています。一方、モハ789形200番台に取り付けられた主変換装置は3レベルIGBTコンバータと2レベルIGBTインバータで構成されるN-CI789-3で、出力230kWの誘導電動機N-MT731を4台、台車単位で制御しています。いずれの主変換装置もベクトル制御を採用しています。主変圧器は2電動車対応の強制風冷式N-TM789-FNをモハ788形200番台、1電動車対応の走行風自冷式N-TM789-ANをモハ788形100番台の床下にそれぞれ設置しました。主電動機は床上に設置した雪切室による強制冷却方式を採用しています。集電装置はシングルアーム式N-PS789をモハ788形の屋根上に1台設置しています。クロハ789形100番台とクハ789形200番台の床下には、補助電源装置は主変圧器の3次巻線400Vを入力し、サイリスタ+ダイオード混合ブリッジを採用した12kWの出力をもつコンバータ部で100V直流電流を出力し、IGBTを採用したインバータをPWM制御することで出力7.5kVAの100V交流電流を2系統出力する補助電源装置N-APS789と2000l/minのレシプロ式電動空気圧縮機N-MHI785-C2000Mが設置されています。空気ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、T車遅れ込め制御を取り入れています。また、青函トンネル内の下り勾配を考慮した抑速ブレーキを採用しています。先頭車の床下にはATC及びATS-Nが設置されており、ATC区間では起動加速度2.5km/h/s、ATS区間では起動加速度が1.8km/h/sに切り替えられます。
客室設備
座席は全てリクライニングシートを採用し、シートピッチはグリーン車が1145mmで1-2列配置、普通車が960mmで2-2列配置となっており、グリーン席の座席は青色の牛革張りです。座席肩には手摺りが取り付けられました。グリーン席には荷棚下に読書灯が設置されています。またクロハ789のグリーン車と普通車の窓下にPC用コンセントが設置されています。車内仕切扉は、光電スイッチ検知式の自動扉です。客室とデッキを仕切る扉の上部にLED式車内案内表示器が設置されました。室内照明は蛍光灯とハロゲンランプが交互に配置されています。クロハ789形100番台には車販準備室と多目的室が設けられています。また、モハ788形100番台には喫煙室が設けられています。クロハ789形100番台、モハ789形200番台、及びクハ789形200番台には洋式トイレが設置されており、クロハ789形100番台のトイレは車椅子対応となっています。また、クハ789形200番台には男性用小便所が設置されています。モハ788形100番台には車掌室、モハ789形200番台には電話室が設置されており、いずれも構内入換用の簡易運転台が設けられています。
増備車
JR北海道は2005年に津軽海峡線の輸送力増強を目的に、789系2次車を11両製造しました。編成両数を6に増やすため、中間付随車サハ789形100番台を追加しました。サハ789形100番台はデッキ部に構内入換用簡易運転台が設けられています。また、多客時に8両編成とするため、青森方に連結することができる2両編成が導入されました。この付属編成にはモハ789形300番台中間電動車が追加されました。モハ788形300番台はモハ788形200番台のデッキにあった簡易運転台が準備工事までとなっています。また、床下には強制風冷式主変圧器N-TM789-FN及びに主変換装置は3レベルIGBTコンバータと2レベルIGBTインバータで構成されるN-CI789-3が床下に取り付けられており、出力230kWの誘導電動機N-MT731を4台、台車単位で制御しています。なお、付随車を導入した関係で、起動加速度が2.2km/h/sとなりました。
改造
2007年には喫煙室が廃止されフリースペースに変更されました。
2016年に北海道新幹線の開業に伴って特急「スーパー白鳥」が廃止になった後、JR北海道は789系0番台を札幌-旭川間の特急「ライラック」に転用するためいくつかの改造が実施されました。保安装置はATCが撤去され、ATS-DNら変更されました。また、抑速ブレーキが廃止となっています。また、車体側面に設置されていた雪切室が埋められ、新たな吸気口が車体外妻上部に設置されました。また、前面表示器が従来の幕式から1000番台と同じフルカラーLED表示に変更されました。
2017年には車椅子スペースをクハ789形200番台に設けるため、座席が1列撤去されました。
運用
2002年より八戸と札幌を結ぶ特急「スーパー白鳥」として運転を開始しました。2010年に東北新幹線が新青森まで全通した2010年から、新青森と函館間の特急「スーパー白鳥」として使用されました。しかし、2016年に北海道新幹線が新函館北斗まで開業したことに伴い、特急「スーパー白鳥」は全廃となりました。
余剰となった789系0番台は2017年3月より札幌-旭川間の特急「ライラック」に使用されていた785系を置き換えました。789系0番台は現在、札幌-旭川間の特急「ライラック」に使用されています。 |
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