登場の背景と概要
寒冷地区で融雪水による電動発電機の故障が多発していたため、国鉄は1975年に奥羽線全線電化にあわせて導入する485系に耐寒耐雪構造を追加し、1000番台で区分しました。
車体
幅2946mmの広幅車体を持ち、軽量形鋼と鋼板形押材を使用した普通鋼製で、車体外板や屋根板、床板は耐食性に優れた耐候性高張力鋼板を使用しました。先頭車前頭部は非貫通化するとともに、車体長を250mm長くして乗務員室のスペースを拡大しました。正面に逆三角形の砲金製特急シンボルマークと電動列車種別幕が取り付けられました。高運転台構造を採用し前面窓は平面ガラスを採用しました。先頭部貫通扉の左右下部にシールドビーム前照灯と尾灯が縦に並べられています。先頭部の両側面にはJNRのロゴマークが取り付けられました。先頭部の連結器は密着連結器に変更されました。車体側面には700mm幅のステップ付片開扉とグリーン車は座席ごと、普通車は座席2列毎の熱線吸収ガラスを採用した複層ガラスを採用した固定窓が設置されています。戸閉装置は直動式のTK100Bです。車体側面には行先方向幕が取り付けられました。モハ484形1000番台の屋根上には28,000kcal/hのAU71A冷房装置が、それ以外の車両の屋根上には5500kcal/hのAU13ENが5台と、押込式通風器が取り付けられています。車体塗装はクリーム色で窓周りと車体裾部に赤色の帯を配しました。車体塗装はクリーム色で窓周りと車体裾部に赤色の帯を配しました。
台車
台車は大径心皿方式の動台車がDT32E、付随台車がTR69Hで、枕バネにローリングと左右動を改善するため傾斜面板方式のダイヤフラム型空気バネを採用し、軸箱支持方式はウイングバネ式ペデスタル方式です。動台車の動力伝達方式は中空軸平行カルダン撓み板接手方式とし、歯車比は3.50としました。基礎ブレーキ装置は動台車が踏面片押し式、付随車はディスクブレーキとしています。
走行機器及び補機
主電動機は出力120kWのMT54D直流直巻電動機で、モハ485形に設置された抵抗制御、ノッチ戻し制御、抑速発電ブレーキを採用したCS15F電動カム軸接触器式主制御器により、モハ484形1000番台を含めた8個の主電動機を制御しています。モハ484形1000番台の床下にはシリコンオイルを使用した主変圧器TM20とPCBを使用しない主整流器RS22Aが、屋根上には2台のPS16HパンタグラフとCB103A空気遮断器が設置され、パンタグラフはケーブルで連結されています。なお、一部のモハ484形1000番台の主整流器はRS45Aが取り付けられています。またクハ481形1000番台とサロ481形1000番台の床下には210kVAのMH129-DM88電動発電機が、クハ481形1000番台の運転席助手席下部とサロ481形1000番台の床下には電動空気圧縮機MH113B-C2000Mが、運転室の屋根上には架線電圧検知器がそれぞれ取り付けられています。なお、サロ481形1000番台の電動発電機は通常時は自車のみ給電しますが、電動発電機故障時は運転室から回路の切り替えができます。また、主制御装置故障時のユニットカット操作も運転室で行うことができます。空気ブレーキ装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキで、120km/h運転に対応するためシリンダ圧力を増圧機能が追加されました。また、ブレーキ制御機器はユニット化され、飛石防止及び防水化を図りました。
客室設備
客室設備はグリーン車がシートピッチ1160mmで2-2列配置のR27形リクライニングシート、普通車がシートピッチ910mmで2-2列配置のR51AN形簡易リクライニングシートです。客室の側窓には横引きカーテンが取り付けられ、グリーン車はロールアップブラインドも併用しています。グリーン車は車販準備室と車掌室を車体前寄りに、和式トイレと洗面所を車体後ろ寄りに設置しました。普通車は出入口側に和式トイレと洗面所が設置されています。また、トイレには汚物処理装置が取り付けられました。なお、モハ484形1000番台の出入口後方に車掌室が設置されています。
増備車
1978年8月以降に製造された車両から、モハ484形1000番台の冷房装置がAU71Bに変更されました。また、モハ484形1000番台の一部車両の主整流器は、RS45Bに変更しています。戸閉装置がTK103に変更されています。普通車の座席は、リクライニングがロックできる様に改良されたR51BNに変更されました。
改造
国鉄
サロ481形1050番台
1978年の485系1000番台の増備の際、グリーン車は電動発電機と電動空気圧縮機を装備したサロ481-115, -116, -122, -123, -127, -128にジャンパ栓を追加し、1050番台で区分しました。
サロ481形1500番台
1978年に181系用グリーン車として製造されたサロ181形1100番台はサロ481形1000番台と同じ仕様とし上越新幹線開業後に485系グリーン車に転用できるようにしていました。このため、1982年の上越新幹線開業後、ジャンパ栓を改造してサロ481形1500番台で区分しました。
クモハ485形1000番台
特急「たざわ」を5両編成に短編成化のため、1986年にモハ485-1017, -1019, -1023, -1048, -1072, -1073, -1076, -1079, -1080の前寄りに運転台ユニットを接合し、出入口を前寄りに移設しました。3両〜5両編成で使用しクロハ481形1000番台の電動空気圧縮機や電動発電機だけで必要な容量が確保できているため、電動空気圧縮機や電動発電機は搭載しておらず、非常用電源装置SC16Aが取り付けられています。
クロハ481形1000番台
5両編成の特急「たざわ」にグリーン車を導入するため、1986年にクハ481-1008, -1012, -1014, -1018, -1024, -1026, -1034, -1036の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形1000番台に区分されました。グリーン室は高床化し、廃車発生品のリクライニングシートR27がシートピッチ1210mmで2+2列に取り付けられました。グリーン室と普通室の間には扉と仕切壁が設置されました。
JR東日本
クロハ481形1000番台
特急「はつかり」にグリーン車を導入するため、1987年にクハ481-1001, -1003, -1009, -1015, -1017, -1021, -1023, -1029, -1031, -1033, -1501の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形1000番台に区分されました。グリーン室は高床化し、100系新幹線電車のグリーン車に準じたリクライニングシートがシートピッチ1210mmで2+2列に取り付けられました。グリーン室と普通室の間には自動扉と仕切壁が設置されました。1988年にクハ481-1013もクロハ481形1000番台に改造されました。
さらに特急「いなほ」と「つばさ」に使用されていた 6両編成にグリーン車を導入するため、1988年にクハ481-1002, -1004, -1028, -1038, -1040, -1042の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形1000番台に区分されました。グリーン室は高床化し、100系新幹線電車のグリーン車に準じたリクライニングシートがシートピッチ1210mmで2+2列に取り付けられました。これらの車両は特急「たざわ」用の編成に使用され、もともと用されていたクロハ481形1000番台を特急「いなほ」、「つばさ」に転用しました。
加えて、583系が使用されていた特急「はつかり」を485系1000番台に置き換えるため、1993年にクハ481-1019, -1035, -1041がクロハ481形1000番台に追加改造され、グリーン室は高床化のうえ廃車発生品のリクライニングシートR27がシートピッチ1210mmで2+2列に取り付けられました。
クハ481形1100番台
特急「ひたち」に使用されていた一部の先頭車の老朽化が進んだことから、1989年から翌年にかけてサロ481-1003, -1004, -1006, -1501〜-1505の後寄りに運転台ユニットを接合しました。R55Cリクライニングシートがシートピッチ910mmで2+2列に配されています。客室の前寄りには多目的スペースが設けられました。トイレ、洗面所は撤去されています。電動空気圧縮機MH113B-C2000MAと210kVAの電動発電機MH129-DM88が床下に設置されています。また、屋根上には5500kcal/hのAU13ENユニットクーラが5台設置されています。後年、運転席後方の床上にAU203ユニットクーラが取り付けられました。
サハ481-303
特急「ひたち」に使用されていた485系をモノクラス7両編成にするため、1989年にサロ481-1051の座席がR55Cリンクライニングシートに取り替えられ、シートピッチ960mmで2+2列に取り付けられました。
クロハ481形1500番台
1993年に新設された郡山と会津若松を結ぶ特急「ビバあいづ」にグリーン車を導入するため、1993年にクハ481-1104の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形1500番台に区分されました。グリーン室は255系グリーン車のリクライニングシートがシートピッチ1160mmで2+2列に取り付けられました。グリーン室と普通室の間には自動扉と仕切壁が設置されました。車体後方には電話室と荷物室が設けられました。
運用
485系1000番台は青森運転所と秋田運転区に投入され、特急「はつかり」、「やまびこ」、「ひばり」、「いなほ」、「白鳥」、「つばさ」に使用されました。東北・上越新幹線開業後は、「はつかり」、「鳥海」、「いなほ」、「白鳥」、「つばさ」、「北越」、「雷鳥」の他、特急「たざわ」に使用されました。
国鉄の分割民営化により485系1000番台は、一部の電動車がJR西日本に継承された以外は、全てJR東日本に継承されました。
1988年の青函トンネル開通にともない、特急「はつかり」は2往復が函館までの延長運転を開始し、1991年には函館までの運転が3往復となりました。1996年には485系1000番台が485系3000番台に改造されています。一方、田沢湖線の特急「たざわ」は秋田新幹線の開業により廃止となっています。
日本海縦貫線では、特急「白鳥」、「北越」、「雷鳥」に使用されていましたが、2001年に特急「白鳥」の廃止と特急「雷鳥」からの撤退により、特急「北越」の他、快速「くびき野」や「ムーンライトえちご」に485系3000番台とともに使用されました。また、急行「能登」は489系の老朽化により定期列車の運行を廃止したのち、485系1000番台が臨時急行として使用されました。しかし、急行「能登」は2012年以降運転されませんでした。2015年の北陸新幹線金沢開業にあわせて485系1000番台は徐々に撤退し、2014年に全車廃車となりました。
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| 主要諸元 |
| 項目 |
内容 |
| 電気方式 |
直流1500V、交流20000V,
50/60Hz |
| 車両性能 |
最高速度: 120km/h |
| 全長 |
20500mm |
| 全幅 |
2946mm |
| 全高 |
3745mm |
| 台車 |
DT32E(動台車), TR69H(付随台車) |
| 集電装置 |
PS16H |
| 主電動機 |
MT54D(120kW) |
| 駆動装置 |
中空軸平行カルダン撓み板継手方式(歯数比:
3.50) |
| 主変圧器 |
TM20 |
| 主整流器 |
RS22A, RS45A, RS45B |
| 制御方式 |
抵抗制御(CS15F) |
| 冷房装置 |
AU13EN, AU71A, AU71B |
| 設計 |
日本国有鉄道 |
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