登場の背景と概要
1970年当時、急行列車では列車の分割併合が行われており、電車特急も山陽新幹線や東北・上越新幹線開業後は特急列車でも分割併合運転が実施されると想定されることから、1972年の羽越線新津-秋田間電化開業用に製造された485系は、183系0番台のような貫通式先頭車の導入や空調機の変更が行われ、200番台で区分されました。
車体
幅2946mmの広幅車体を持ち、軽量形鋼と鋼板形押材を使用した普通鋼製で、車体外板や屋根板、床板は耐食性に優れた耐候性高張力鋼板を使用し、客室床は防音・防振対策として浮き床構造を採用しました。先頭車前頭部には貫通扉が取り付けられ、貫通扉及び幌は左右2分割式外扉で覆う構造とし、正面に逆三角形の砲金製特急シンボルマークと列車種別幕が取り付けられました。高運転台構造で前面窓は平面ガラスを採用しました。先頭部貫通扉の左右下部にシールドビーム前照灯と尾灯が縦に並べられています。先頭部の両側面にはJNRのロゴマークが取り付けられました。先頭部の連結器は密着連結器に変更されました。なお、クハ481-203, -204, -207, 208には電気連結器と外扉自動開閉用エアシリンダが試験的に取り付けられました。車体側面には700mm幅のステップ付片開扉とグリーン車は座席ごと、普通車は座席2列毎の熱線吸収ガラスを採用した複層ガラスを採用した固定窓が設置されています。戸閉装置は直動式のTK100Bです。食堂車両端には回送運転台が設置されています。食堂車以外の車体側面には行先方向幕が取り付けられています。モハ484形200番台の屋根上には28,000kcal/hのAU71A冷房装置が、それ以外の車両の屋根上には5500kcal/hのAU13Eが5台と、押込式通風器が取り付けられています。車体塗装はクリーム色で窓周りと車体裾部に赤色の帯を配しました。車体塗装はクリーム色で窓周りと車体裾部に赤色の帯を配しました。
台車
台車は大径心皿方式の動台車がDT32E、付随台車がTR69Eで、枕バネにローリングと左右動を改善するため傾斜面板方式のダイヤフラム型空気バネを採用し、軸箱支持方式はウイングバネ式ペデスタル方式です。動台車の動力伝達方式は中空軸平行カルダン撓み板接手方式とし、歯車比は3.50としました。基礎ブレーキ装置は動台車が踏面片押し式、付随車はディスクブレーキとしています。
走行機器及び補機
主電動機は出力120kWのMT54D直流直巻電動機で、モハ485形に設置された抵抗制御、ノッチ戻し制御、抑速発電ブレーキを採用したCS15F電動カム軸接触器式主制御器により、モハ484形200番台を含めた8個の主電動機を制御しています。モハ484形200番台の床下には外鉄形の主変圧器TM14と主整流器RS40Aが、屋根上には2台のPS16HパンタグラフとCB103A空気遮断器が設置され、パンタグラフはケーブルで連結されています。またクハ481形200番台の床下には210kVAのMH129-DM88電動発電機と電動空気圧縮機MH113B-C2000Mが、運転室の屋根上には架線電圧検知器が取り付けられています。サシ481形の床下には70kVAのMH94-DM58電動発電機がそれぞれ取り付けられました。空気ブレーキ装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキで、120km/h運転に対応するためシリンダ圧力を増圧機能が追加されました。
客室設備
客室設備はグリーン車がシートピッチ1160mmで2-2列配置のR27形リクライニングシート、普通車がシートピッチ910mmで2-2列配置のT17B形回転式クロスシートです。客室の側窓には横引きカーテンが取り付けられ、グリーン車はロールアップブラインドも併用しています。食堂車はベネシャンブラインドを採用しています。グリーン車は和式トイレと洗面所、及び車掌室を車体前寄りに、洋式トイレと洗面所を車体後ろ寄りに設置しました。普通車は出入口側に和式トイレと洗面所が設置されています。食堂車は車体前寄りに調理室と物資積込用扉が、後位に食堂が設置され4人席テーブル10席を両側に配置しました。食堂には流し、配膳台、電子レンジ、冷蔵庫、及び洋式便所が設置されており、食堂の海側が通路になっています。
増備車
1972年に発生した北陸トンネル火災事故の対策として、新製車両はA-A基準の防火対策が導入されることとなったため、1973年1月以降に製造された車両から、グリーン車と食堂車のテーブル、及び荷物棚を金属製に、妻引戸の窓ガラスを網入りに、それぞれ変更されました。また、この時車掌車付のモハ484形が登場し、600番台で区分されました。1973年8月以降に製造された車両から、防火対策のため浮き床構造から固定床構造に、AU13Eのカバーを鋼板化するなど難燃化対策を行ったAU13ENに変更されました。
改造
国鉄
主変圧器の更新
有害なPCBを使用しないTM20主変圧器が開発されたため、1976年以降取替工事が実施されました。
普通車座席更新
T17回転式座席が1986年から1993年にかけてR55Cリクライニングシートに更新されました。
サシ481形80番台
特急「白山」の雪害対策として予備の電動発電機と電動空気圧縮機の導入、及び電動車比率を高めるため食堂車が廃止となったことで余剰となったサロ489-10〜12を1978年に485系に編入し、サシ481形80番台に区分されました。
クモハ485形0番台
特急「有明」を5両編成に短編成化するため、1984年から1985年にかけてモハ485-97, -98, -100〜-102, -104, -105, -109, -111, -113, -116, -118, -120, -134, -145の前寄りに運転台ユニットを接合しました。床下に110kVAの電動発電機MH128A-DM85Aが、運転室後方の機械室内に電動発電機付属装置、空気溜、助手席下に電動空気圧縮機MH113B-C2000MAがそれぞれ取り付けられています。また、屋根上には5500kcal/hのAU13Eが5台設置されています。
クロ480-5〜15
特急「有明」を5両編成に短編成化するため、1984年から1985年にかけてサロ481-53, -56, -58, -64, -67, -76, -84, -87, -102, -130の後寄りに運転台ユニットを接合しました。助手席下に電動空気圧縮機MH113B-C2000MAが、床下に210kVAの電動発電機MH129-DM88が取り付けられました。また、屋根上には排気用のガーランド式通風器と押込型通風器と一体となった5500kcal/hのAU13Eが4台設置されています。
クモハ485-101
1986年にモハ485-202の前寄りに運転台ユニットを接合し、出入口を車体後端に移設しました。3両〜5両編成で使用しクハ481形の電動空気圧縮機や電動発電機だけで必要な容量が確保できているため、電動空気圧縮機や電動発電機は搭載していません。
クロハ481-201〜208
1986年にクハ481-236, -242, -244, -248〜-250, -252, -259の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形200番台に区分されました。グリーン室は高床化し、0系の廃車発生品のリクライニングシートR-25がシートピッチ1220mmで2+1列に取り付けられました。グリーン室と普通室の間にはガラス製の仕切が取り付けられています。
クロハ481-209〜215
1986年にクハ481-201, 204, 205, 209〜212の前寄り半室をグリーン車とし、クロハ481形200番台に区分されました。グリーン室は高床化し、廃車発生品のリクライニングシートR27がシートピッチ1200mmで2+2列に取り付けられました。グリーン室と普通室の間には自動扉と仕切壁が設置され、グリーン室の仕切壁横に荷物置場が設けられました。
クハ480-4〜-8
紀勢線に残っていた気動車急行「きのくに」を電車化するため、国鉄は485系を紀勢線に投入することとし、天王寺-白浜間は8両編成、白浜-新宮間は4両編成とするため、サハ481-15〜-19の後位寄りに貫通扉付の運転台ユニットを接合する改造が1984年に行われ、クハ480形0番台で区分しました。電動発電機や電動空気圧縮機は取り付けられていません。屋根上には5500kcal/hのユニットクーラAU13Eが5台設置されています。
サロ481-501, -502
特急「雷鳥」に使用される和風電車「だんらん」用として、サシ481-54, -55の後位寄りの旧食堂に畳敷きの客室を7区画設け、側窓には雪見障子が取り付けられました。前位寄りの旧調理室は各機器を撤去して、電子レンジと電気コンロがオープンカウンタに設置されました。なお、回送運転台と従業員用トイレは撤去されました。車体塗装はクリーム色で窓周りと車体裾部に赤色の帯と窓回りの帯の下に金色の細帯を配しました。
クハ481-701
サハ489-11の後位寄りにクハ481形300番台の運転台ユニットを接合する改造が1986年に実施されました。助手席下に電動空気圧縮機MH113B-C2000Mが移設され、床下に210kVAの電動発電機MH129-DM88が取り付けられました。屋根上には押込型通風器と5500kcal/hのユニットクーラAU13ENが5台設置されています。
クハ481-753
サハ489-5の後位寄りにクハ481形300番台の運転台ユニットを接合する改造が1986年に実施されました。床下に電動空気圧縮機MH113B-C2000Mと 160kVAの電動発電機MH135-DM92が取り付けられました。屋根上には押込型通風器と5500kcal/hのユニットクーラAU13Eが5台設置されています。
クハ481形800番台
特急「くろしお」に使用されていた485系を特急「北近畿」に転用するため、1986年にクハ480-6, -8の床下に電動空気圧縮機MH113B-C2000Mと210kVAの電動発電機MH129-DM88が取り付けられ、クハ481形800番台に区分されました。
クハ481形850番台
特急「くろしお」に使用されていた485系を特急「北近畿」に転用するため、1986年にクハ480-5の床下に電動空気圧縮機MH113B-C2000Mと160kVAの電動発電機MH135-DM92が取り付けられ、クハ481形850番台に区分されました。
JR西日本
クロ481形2200番台
485系4両編成で運転されていた金沢と長岡を結ぶ特急「かがやき」の利用が好調であることから、JR西日本は1991年にグリーン車を導入するため、クハ481-224の座席が2+1列のリクライニングシートに取り替えられ、シートピッチ1180mmで配されました。座席にはオーディオユニットが取り付けられています。トイレは洋式に変更されました。なお、前面貫通扉は閉鎖されています。
サロ481-2001
JR西日本は特急「スーパー雷鳥」用にラウンジ付グリーン車を導入することとなり、1988年にサロ481形500番台をラウンジ付グリーン車に改造しました。座席床を150mm高くし、オーディオユニットが取り付けられたリクライニングシートがシートピッチ1160mmで2+1列に配置されています。車体側面に物資積込用扉はありますが、乗降用扉はありません。客室部天井はラインフロー式に変更され、荷棚には見栄え向上のためカバーが取り付けられました。ラウンジ室のカウンタ部を売店として使用し、商品陳列棚、ジュースクーラ、冷蔵ショーケースを設けました。ラウンジ室にはソファが設置され、仕切壁には公衆電話が設置されました。床下にはクロ481形2000番台からMH113B-C2000M電動空気圧縮機が移設されています。
サハ481-501
特急「しらさぎ」用に先頭車を捻出するため、1997年にサロ481-66が普通車に改造され、サハ481-501に改番されました。R55Cリクライニングシートがシートピッチ980mmで2+2列に配されています。
JR九州
クロ480形0番台冷房装置追加
クロ480形0番台の冷房能力を高めるため、前位寄りにAU13Eが追加設置されました。
クロハ481-1〜8
1987年にクハ481-226, -232, -233, -234, -239, -241, -251, -262の前寄り半室をグリーン車としました。グリーン室は高床化し、0系の廃車発生品のリクライニングシートR25がシートピッチ1220mmで2+1列に取り付けられました。また、普通車はR55Cリクライニングシートに取り替えられました。グリーン室と普通室の間にはガラス製の仕切が取り付けられています。
クロハ480-51〜-52
1987年と1988年にクロ480-11, -12の後位寄りを普通車としました。グリーン室は高床化し、0系の廃車発生品のリクライニングシートR25がシートピッチ1220mmで2+1列に取り付けられました。クロ480形の後位にあった車掌室は撤去され、側窓が拡大されました。また、座席がR55Cリクライニングシートに取り替えられています。
クロ481-301
1989年にクハ481-243の座席がR27リクライニングシートに取り替えられ、2+2列でシートピッチ1160mmに配されました。また、客室後位に車掌室が設置されました。
クハ481形200番台の貫通路閉鎖改造
クハ481形200番台の先頭部貫通扉の隙間風対策として貫通扉を閉塞し、貫通部外扉が撤去されました。
運用
485系200番台は羽越線新津-秋田間の電化開業にあわせて1972年に青森運転所に配置され、特急「白鳥」、「いなほ」で営業運転を開始しました。また、常磐線に特急「ひたち」が新設されるとともに、東北線の特急「はつかり」、「ひばり」、「やまびこ」にも投入されました。一方、向日町運転所にも485系200番台が投入され、特急「雷鳥」、「しらさぎ」、「つばめ」、「みどり」、「はと」、「しおじ」、「にちりん」で営業運転を開始しました。
1975年の山陽新幹線開業に伴い、一部の車両が南福岡電車区転属となり、特急「有明」、「にちりん」の増発に充てられました。1976年の長崎・佐世保線の電化開業に伴い、秋田電車区から転属した485系200番台は特急「かもめ」、「みどり」で営業運転を開始しました。1980年には特急「くろしお」増発のため、日根野電車区に転属しました。更に1982年には東北・上越新幹線の開業に伴い特急「ひばり」「やまびこ」が廃止となり、余剰となった485系200番台は向日町運転所や南福岡電車区に転属しました。しかし、特急「くろしお」に使用されていた485系200番台は381系により置き換えられ、余剰となった485系200番台は福知山電車区に転属して特急「北近畿」に使用されました。
国鉄の分割民営化により485系200番台は主にJR西日本、JR九州に継承されました。
JR九州では特急「有明」、「かもめ」、「みどり」に使用されていましたが、783系、787系、883系、885系により置き換えられ、特急「にちりん」、「きりしま」、「ひゅうが」に転用されました。しかし、2011年の九州新幹線全線開業に伴い残存する485系200番台が置き換えられ、2013年までに全廃となりました。
一方、JR西日本では特急「雷鳥」、「しらさぎ」、「加越」、「北近畿」に使用されていましたが、特急「北近畿」に使用されていた485系200番台は183系800番台に改造されました。また、特急「雷鳥」、「しらさぎ」に使用されていた485系200番台は683系4000番台に置き換えられ、2011年に全車廃車となりました。 |
|
